この靴のインスピレーション源は『プレデター』と『攻殻機動隊』と『エイリアン』です。
そう言われてピンと来るでしょうか。来ないでしょうか。
他にも『ブレードランナー』など…枚挙にいとまが無いですが私の愛するSF映画の金字塔たちは、その近未来の映像をとてもアナログな手法で実現していました。着ぐるみやミニチュアなどを実際に作成し、無機物と有機物のバランスを操作して、数歩先の未来に現在との接続を感じさせる説得力を持たせています。
未来の景色を描写しながら、それでも変わらない”人間”や”生命”を描くことで、その本質を解き明かそうとするのがSF映画の醍醐味だと思います。
さてこの靴の話ですが、多層的に重なり合う有機的な曲線はまるでギーガーが描いた曲線。エイリアンの口元から首筋に見られる露出した筋の連続。歩行する中でも足の動かない箇所を繋ぐことで重いトリプルソールを持ち上げます。
アナログなシェルとして使用されてきた「黒ざん革」に由来し、甲に乗っかるようなストラップのデザインには防具のようなイメージを持たせました。
白のアッパーに採用したのは「黒ざん革」
古くは甲冑に使用されていた姫路の伝統的な革を坂本商店 @himejikurozan.tannery が復活させました。
型押しした牛革の吟面に白漆を刷毛塗りしています。漆によりコーティングされた硬質な手触りとは裏腹に、革ならではの柔軟性を保っている理にかなった素材です。手塗りによる色ムラがあります。
雄々しいブラックは茶利ゴートとイタリアのホースバケッタを採用しました。
茶利ゴートとは、オイルを入れながら硬く鞣したタンニンゴートを、研磨された石を使って手で擦ることで表面を優しく艶立たせた革です。機械でやるグレージングと違ってシボを潰さずにシボのトップだけ優しく艶立たせられるのが特長です。こちらも硬質な手触りとは裏腹にゴートのしなやかさを活かしせるのも良いです。
一見して「無機質なギア」という趣ながら、あくまでもトラディショナルな製靴技法によって形作られています。
カテゴリーとしてはモンクストラップやグルカサンダルのような、でもどちらでもない、「SFサンダル」です。
Material: Himeji-Kurozan,Seasonal Materials
Construction: Mckay&Good-year