Note

“あの頃の”エレガントなバッグ。エレガントなベルト。

エレガント:落ち着きがあり上品で美しいさま

エレガントな造形。というのは、デザインする上で常に意識していることです。

エレガントな造形を意識するとき、輪郭には特に注目します。

美しい輪郭を持つこと。

革と布の大きな違いの一つに「コバ」があります。
革の断面のことです。
革の最大の特徴は、このコバを磨くことができるということ。
木の家具もそうでしょう。

そしてこのコバ処理こそ、大きな問題でして…

靴の場合アッパーにもコバは存在しますが、わかりやすいのは革底のコバですね。
革底がゴム底よりも”高級感”があるのは、ひとえにコバによるものだと考えています。

コバは、磨けば磨くほど(時間をかければかけるほど)綺麗になります。
土団子の要領です。
磨いて磨いて擦って擦って、繊維が詰まっていき蝋で表面がコーティングされ奥深い艶を発するまでになる。
そしてそれを人目につかない場所に隠して、何日持つか確かめる…のは土団子のお話です。懐かしい。

そんな具合に綺麗にするには単純に人間の時間を要します。(もちろん機械を使いながらでもなお、です。)
やればやるほど綺麗になってやり甲斐を感じられるのでやっちゃうんですよね。

この工程に限らず、革製品や革靴を作る工程は一作業単位は単純なのですが、1の成功を重ねると確実に綺麗に重なるし、1の失敗は決して誤魔化しが効かない。
そうこうしていると気づけば日が暮れているという、時間を喰らう特級呪物なのです。
(宿儺、結局屁みたいな倒され方したなぁ。)
私自身、コバ磨きだけは好き。縫製はそんなに好きじゃない。

なんの話でした?

そう、要は革で綺麗なものをつくる、というのは突き詰めれば「単に時間をかける」という側面が強いのです。
それはもう絶対に辿り着けない“無限”なので、
ある程度のところを落とし所としないといけません。

コバが綺麗なものを作りたい。
というのは、単純な望みでありながら、それをある程度の数作るのは実は簡単じゃないという話。

今回Dress-Bagを作るためにバッグメーカーに相談して回る中で、これを痛感しました。
あのブランドやこのブランドのバッグのことも教えてもらったり。
その中で、財布などの”小物屋”と”鞄屋”の明確な境目を知る。
簡単に言うと”大きさ”に尽きるそうです。
(説明は省きます。)

これでは無理。作ってもらえない。

でも諦めない。

小物屋さんにやってもらえる範囲と、やってもらえない範囲を分けて考えよう。

ボディはコバ磨きの綺麗な小物屋さんに。
ショルダーベルトはDress-Beltのベルト屋さんに。

別々に探していた2アイテムの背景を活かして、こちらでアッセンブルできるデザインにする。

ベルトを外して独立して使える、その上できちんと綺麗。
ベルトを腰巻きにしてウエストバッグにも出来る。

結果3Wayに。
wayな面構えのバッグではないけど、wayできる。嬉しいですね。

数少ない結婚式お呼ばれ経験から言うと、スーツに合わせるクラッチサイズのバッグが欲しかったので、そういうシーンにも活躍します。
パートナーとシェアするのも良。

絶妙に“あの頃のイタリアの革小物”を意識したバッグに仕上がりました。

Online Store

Dress-Belt

続いてベルトの話も。
ベルトも何気に今季から初登場。
太ったり痩せたりして必要になったっていうのと、「バックル作りたかった」のと。

これもコバ云々ってなりそうだったんですが、それよりも革芯の入った“ちゃんとした”本格ベルトが欲しくなりました。

ユニクロにもスーツ屋さんにも百貨店にもいくらでもあるんですけど、もうちょっと今のバランスにしたいなと。
25mmか30mmか35mmでこと足りるっちゃ足りるが…。

細いような太いような絶妙な幅のもの。
剣先がちょっと長くてシャープな雰囲気の。
目立つような目立たないようなシャープなバックルの。

とまぁ、いつも通り“〇〇と〇〇の間”を探ってしまいました。

革はトップグレードのイタリアンカーフ。
(サンプル時のイタリアンカーフのタンナーから一向に革が上がってこなかったので、生産時はさらに上のイタリアンカーフになってます。バッグもブーツも同じです。)
ライニングのエンボスレザーはフランス。

とにかく肌理が細かく透明感があり、しなやかで使い込むほどに艶が出てきて育て甲斐があります。
フランスのカーフはもう少し肌理が大きくて吟が厚くて硬い印象なのに対してイタリアは柔和な印象がありますね。

バックルは28mm幅という規格をオリジナルで作りました。
真鍮磨きにすることは決めていたので、ビカビカになりすぎないようにキラッと光る存在感を想定して全体の線幅は細め。
『星間飛行』のキラッ☆くらいの主張。

この手のカーフベルトでコバ磨きしだしたら大変なので、色々探っていたところフランス式というヘリ返しの亜種みたいなものを知りました。
ライニングを上にヘリ返してくることでコバがシームレスに見えます。
とはいえライニングが型押しなのでちょっとコントラストもあり。
サル革もきちんと芯が入ってモリッ☆としているのも良いです。
バックル周りのギュッ☆と手縫いも良いです。
まったくヘタらないしっかりしたDress-Belt、おすすめです。

Online Storeでは完売しております。お取扱店はProductsより。

余談ですが…
イタリアイタリアと言いながらフランス式。
イタリアのプリズナーシューズモチーフのMil-Dressはフレンチカーフ。
造形的にイタリアかフランスかイギリスかアメリカかっていうのもありますが、やっぱり革がどこの革かで一気に印象持っていくなと思います。

この人、いまさら呪術にハマっていたのでは?と思いましたか。
いいえ、いまさらハマっていたのはヒロアカでした。10年分を駆け抜けました。
金木犀の香りで鼻が爆発しそうです。子供の頃、こんなに香り強くなかったように思うのは気のせいでしょうか。こだまでしょうか。