手袋ものがたり-2-
Mil-Glovesのモチーフとなった軍モノの手袋は、札幌の古着屋で見つけた。
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昨年10月後半に受注会のために人生で初めて訪れた札幌は、東京よりもぐっと寒く、しとしと雨が降っていて、傘をさす手が凍えるほど。手袋を持って来なかったことを後悔した矢先、“リサーチ-暇潰し-”と称して立ち寄った古着屋に無造作に置かれていたモノだ。
牛革のアンライニング仕様のそれはガシガシに硬くて野球グローブと同じく革臭い。着け心地もへったくれもないその手袋でひとまず暖を取ったことと、油を張った味噌ラーメンがあつあつでおいしかったのは札幌の思い出だ。
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東京に戻り、その手袋を眺めながらエントレフィーノラムを引き出して、どうかけ合わせて料理するかとしばらく悩んでいたのだが、どうも“素敵な画”が想像できない。
やはり肝心の“革”が見つからない。
その夏にTear Pumpsで採用したエントレフィーノラムを使いたいと思っていたけど、完全なドレスに向いている革ではない。エントレフィーノは圧倒的に“優しい”。パリッとしたドレスにも、ガシッとしたワークグローブにも向いていない。
先方のメーカーにも具体的なことは相談できないまま年末が近づいた頃、これまで取引のなかった革屋さんの存在を知る。それまでディアレザーにはあまり興味がなかったのだが、そこで出会ったのが今回のフィンランドのディアで、その場でエゾジカやイタリアのものとも見比べながら、これなら行けると“素敵な画”が現れた。
その後、イタリアのディア、イギリスのディア、ニュージーランド、エゾジカ。全て取り寄せて見比べる。
間違いない。フィンランドのディアは圧倒的に手触りがいい。吟面のぬめり、伸び、適度なコシ。“革”として、とにかく良い。
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年明けになり、ディアとラムと、これまで愛用してきた“複数の片手たち”を小脇に抱えながら東かがわ市を訪れる。
太平洋側では快晴が続いた今年の1月前半、瀬戸大橋から見渡す内海は一層穏やかだったが、電車を乗り継いで渡る四国はどうも遠くにきたのだと感じ、穏やかな瀬戸内とは裏腹に私の胸は不安と期待で高鳴っていた。
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-3-に続く。