Note

22年締め

事務所の片付けと棚卸しをする日だったのですが、まったく進まないままこの文章を書いています。

目の前に広がる革の山。サンプル靴箱の壁。抜き型の山。梱包資材の山。今は製品在庫がないだけマシですが。
片付けるもなにも、逃がす場所がないと天を見上げるばかりです。

来年はアトリエ移転と人を入れることを”決定事項”にします。
(もう逃げない… 逃げないんだから…。)

今年は夏にアトリエ移転計画を進めていましたが頓挫してしまい、感覚的には大きく前に進むことができないまま終わりました。
そのために上半期は受注会出張を絞っていたのですが、下半期はまた積極的に出るようにしました。
スケジュールが許す限り受注会には立つべきだと思っています。
その中でこそ感じることが多いので。

展示会、受注会出張、生産管理(これ70%)、時に裁断、すべての納品出荷作業。
その間に新型のデザイン(これメインのはずやのに…)とインスタなどの対応を すべて1人でやってきました。
別に1人でやることに価値はなく、たんに人を入れることが後回しになっていただけです。
(今の事務所では もう1人働くスペースすらない。)

Post Productionは僕のつくりたいものをつくり続けるための非常にパーソナルな営みからスタートしていますが、
そこに関わる人が増えていくことで少しずつ、社会的な営みになっていきます。

いっときの”つくりたい”ではなく、”つくり続けたい”というのが確たる原動力です。

この時代だからこそ個人でも対応してもらっていることは多い反面、もうすぐそこに、手のかけたものが作れない未来があるなと感じ続けています。
業界的には職人さんや中間加工屋さんがどんどん廃業していくなかで、毎年、関わってくれる職人さんが増えていっていることは本当に嬉しいことです。

小さなメーカーの大言壮語ですが、革に関わるものづくりをいかに伝えていくか、職人さんの営みと産業をどう伝えていくかがあらためて考える必要があると痛感した1年でした。
もともとはそのへん、アピールしてなんぼとは思っていなかったのですが、やっぱ普通じゃないんですよね。左右対称の2つのものを何十時間もかけて”美意識高く”作り上げるものの価値って。

PosProの取り扱い先のショップもオーナー1人でやっているお店が多いです。
作ってくれている職人さんたちも1人のところが多いです。
靴でいうと裁断職人、製甲職人、クリッピング屋さん、特殊ミシン屋さん、底付け屋さん…
国内には中規模の工場もいくつかありますが、浅草の地場産業である革靴産業は、工程ごとの細かな分業による町工場街としてのものづくりです。
(職人さんは浅草だけにとどまりません。)
これを僕が直接、すべての工程の間に入ってつなぎ合わせて、一つの製品になっていきます。
(日本のインディペンデントなブランドの多くがそうであるように。)

結局、革の…というか、天然素材 と手仕事の魅力にやられちゃってる人間なので、そういう素材に触れるたびに、その魅力をどう活かすかがデザインの根本なんです。(あと、僕のモノ選びの根本でもあります。)
手仕事って、機械を操作しているのも人の手だから。
人の目でみて、人の手でつくっているものすべて。
手仕事だからって、ほっこりぬくぬくとしているわけでもない。
酸いも甘いも全部入っているけど、整っているものが好き。
淡々と、整然としている様からは伝わりづらい熱みたいなものをどう感じ取ってもらうか-。

1人でできることじゃないよな。という帰結です。
バイヤーさんらにももっと手伝ってもらうために、もっと伝えます。
そしてエンドユーザーであるお客さんにも手伝ってもらうためにもっと伝えます。

年の瀬に重いお話でしたが、まったくネガティブではなく前向きです。
事務所の片付けよりも、いったんこれをまとめとかないと次にいけないので。

来年もがんばります。