手袋ものがたり-1-
イギリスブランドの手袋はペッカリーのものもディアのものも持っていた。ヴィンテージの手袋もイタリアモノ、軍モノ、アノニマスなものなどいろいろと持っていた。どの手袋も冬の季節ならではの忘年会や新年会といった荒波を超えることは難しく、片手のみどこかに消えるか、時にはカバンごとどこかに消えていった。そんなことを、道端に落ちているどこか誰かの片手を見ながら思い出す―。
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私が手袋ほしいよね?と聞くと、「なんとなく冬になると手袋は要るけど、これといっていいものがないんだよなー。」と言われることが多い。すごくわかる。そう言っておきながらちゃんと探してはいない事実も察しながら激しく同意する。実際のところは「在るもの」でなんとなく日々を過ごしているのだが、満足はしていない、そんな気持ち。百貨店の1F催事コーナーでも、セレクトショップでも、革手袋は必ず見ると思う。でもそのブランド名を言える人はどれだけいるだろう。
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福井市のRAZE冨山さんや弘前市YURAGI三上さんとは、ずっと前から革手袋の話をしていた。
「車のハンドルが冷たい。」。外出はもとより、車がつらいというのは想像がつかないニーズだ。
彼らのニーズと自分のエゴを繋げるとこうなる。ライニングはカシミアかウールで、柔らかいのに素敵にエイジングする革。
そんな革手袋の構想はブランドスタート当初からあったのだが、同じ革製品でも革靴や革小物と異なり、主たる産地が香川県にあるということや、浅草の革問屋を含め身近な服飾に携わる人たちもその伝手を持たないなど、なかなか革手袋の生産背景にアクセスすることができないまま、長らく夢想するにとどまっていた。
なにより肝心な、「“手袋用に”柔らかいのに素敵にエイジングする革」に巡り会えなかった。
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そんな革を見つけられないまま、21年末に今度こそはと東かがわ市のメーカーさんに問い合わせ、こちらの企画を投げて何度かやりとりを重ね、22年の年明けに現地に行く約束を取り付けたのだが、何度目かのコロナの勢いが増したことで来訪を断念。22AWシーズンは叶わず、そのまま頓挫してしまった…。
-2- へ続く。