あらためてRe-lux
一番はじめのモデル = Re-lux
Re-luxというモデルはそれなりに変わりモノだなと、数年経ってみて思う。
Post Production のラインナップの中にあって比べると「やはりこれ」と言われるような定番になったけど、周りを見渡してみるとありそうでないバランスの上に成り立っている。
つま先を見ると丸い。
横から見るとヒールが高い。
後ろから見るとヒールが小さい。
試し履きをするお客さんは鏡の前で視線を落としくるくると回る。
ローファーに抱いていたイメージとのギャップなのか、履き慣れたパンツの見え方の変化に驚いているのか、少し黙って、「ほんと、綺麗ですね」とお客さんの一言。
ベビーカーフは手のかかる子
アッパーに用いているベビーカーフも、ほとほと扱い難い素材だと思うようになった。
サンプル制作時から職人さんたちから何度も言われてきたことだけど、そんなものかなぁと不勉強な僕は聞く耳を持たず…。
作る数が増えるにしたがって、その言葉に納得せざるをえなくなった。
個体の小さい革であるが故に1枚からとれる足数は平均2足。悪い時は1足。
1枚ずつの革=1頭ずつの牛の個体によってブレも大きい。
タンニン鞣し特有のパリッとした硬さは、引っ張って伸ばすことの多い製靴プロセスの天敵。
あまりのロスの多さに何度も泣きを見て、さすがに数をたくさん作ることに適したものではないと納得した。
そんなことを改まって言う僕に「いや、遅くない?」と職人さんの一言。
それでも、トラ(動物が生前に体が屈曲した跡)も見えるくらいの、透き通った透明感ある艶にいつだって魅了される。
“表面の反射”ではない、奥行きのある艶。
アッパーにもソールにも、職人さんらがそれぞれの美意識で仕上げてくれる細部の立体感があり、一枚の革の中に立体感ある艶がある。
「やっぱ、綺麗だよなぁ」と、磨き終わった僕の一言。